2025/10/23

株式会社PacPort

他業界とタッグを組み、人々のスマートライフを支えるシステムを構築

他業界とタッグを組み、人々のスマートライフを支えるシステムを構築

株式会社Pac Portは不動産業界向けのSaaSを展開する企業だ。
主力プロダクト“Pabbit”は日本における置き配文化を後押しした立役者といっても過言ではない。

宅配業界と不動産業界の課題を一気に解決するソリューションを世に送り出した、沈 燁氏に、創業の背景や今後の展望を伺った。


沈 燁(シェンイェ)さん(代表取締役)
1997年北京大学卒業後、ソフトウェアのエンジニアとして来日
約10年間にわたり通信業界のソフトウェアの開発に携わる
その後、携帯端末や通信インフラの営業に従事
2018年に株式会社PacPort設立

宅配事業の課題に着目「再配達をなくす」ために創業を決意

創業に至った想いをお聞かせください。

当時、対面が主流だった日本の宅配業界で「再配達をなくす」ことを目指したのが創業の原点です。
私は、アメリカではすでにスタンダードとなっていた置き配システムに注目していました。

この背景には、2017年にヤマト運輸が宅配料金を27年ぶりに値上げしたことがあります。同年、佐川急便と日本郵便も値上げに踏み切りました。

値上げの背景は、宅配量が年々増加傾向にあったことと、宅配を担う労働力が減少していたことです。
この課題は宅配事業者のみでは解決できず、技術の力が必要だと感じたことが、創業の決意につながりました。

とはいえ、大手宅配事業者に方向転換をしてもらうのは容易ではなかったのでは?

はい、ここまで来るのは長い道のりでした。

宅配事業者は当初、対面こそ宅配の原点であり本質だと考え、置き配には否定的な姿勢だったんです。
すぐに宅配事業者を動かすのは難しいと判断し、弊社が主体的に提供する仕組みを模索しました。

当初からIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の宅配ボックスを想定していましたが、オートロックの集合住宅が急増したこともあり、最初に試みたのはインターホン会社との連携です。

2020年に特許を出願し、不動産各社とインターホンの最大手であるアイホンに提案したところ、2020年末に採用されました。
翌年から開発を始めた「Pabbit」という弊社の主力商品が初めて導入された物件は2023年3月に竣工しました。
不動産最大手である三井不動産の新築マンションです。

約3年かけて開発したこのシステムは、インターホンと連携し、荷物の伝票番号でオートロックやIoT宅配ロッカーも解錠できる仕組みです。居住者不在でも荷物の配達が可能になります。
現在、Pabbitを採用した新築マンションのデベロッパーは30社を超えました。

ビジネスでいえばB to Bなのですが、インターホン会社に納得してもらったのち、不動産会社に取り入れてもらい、宅配事業者がPabbitを用いてサービスを完結という長い工程があります。

現在、アマゾンやヤマト運輸など、大手宅配事業者との連携まで、事業を拡大しています。

資金調達に難航するも、業界大手とのタッグで事業領域を拡大

ゼロからシステムを構築していくなかで、ぶつかった壁について教えてください。

さまざまありますが、この7年間で難しさをもっとも感じたのは資金調達です。
会社設立に必要なのは「モノ・人・金」だとよく言われますが、私もその通りだと実感しました。

前職の営業経験を活かし、マーケティングの土台はある程度描けていました。
また、開発をともに進めるメンバーも、これまでの人脈を通じて集まってくれたんです。
しかし、金融業界との接点が一切なく、資金調達だけは大きな壁として立ちはだかりました。
実際、現在に至るまでVC(ベンチャーキャピタル)からの出資は受けていません。

そのなかで、2021年には、先ほども話に出たアイホンと資本業務提携を結び、ラウンドA相当の資金提供を受けることができました。
出資と共に、営業面でのリソースも提供いただけたことは、弊社にとって非常に大きな支えでした。

さらに、2025年7月には、美和ロックという鍵・錠前の大手会社と業務提携をする運びとなりました。
このように、大手とタッグを組めたことで、資金面での問題が徐々に解消されたと思っています。

これらの会社は大手だからといって、弊社のようなスタートアップ企業を見下すことなく、対等な立場で向き合ってくれました。
今後とも、互いに信頼し合えるパートナーとして、良好な関係を築いていきます。

最近では、ECの最大手であるAmazonとも商用契約を結んだとも伺っています。

「再配達をなくす」という弊社の目標を達成するには、宅配事業者から採用してもらわなくてはなりません。
Amazonは置き配の普及を目指していましたが、オートロックなど集合住宅のセキュリティが障壁となり、なかなか課題を解決できずにいました。
そこで、弊社のシステムの利便性がAmazonの希望と合致し、商用契約に至りました。

セキュリティのプロともいえるアイホン、美和ロックと連携することによってPabbitは安全性が担保されたシステムになりました。
そこへAmazonが参入することでより良いサービスの提供が可能になった形です。

これは、オートロックマンションに置き配サービスを普及する重要なステップといえます。

現在の置き配の普及具合からすると、貴社の社会的意義はさらに大きくなると思います。

国土交通省は2026年度の予算において、マンションなどでの置き配利用を拡大するためのシステム開発費用の補助を盛り込む方針を発表しています。
この政府の指針は弊社にとって追い風になることは間違いありません。

創業以来、さまざまな環境変化を先に読みながらソリューションを準備してきました。
国交省による後押しは、置き配サービス普及にとって、量から質に転換するタイミングといえるでしょう。

その一端を担わせていただくことになります。

社員とともに挑戦を続け、世界へソリューション展開を視野に

企業を経営していくなかで何を意識していますか。

弊社が事業を進めるうえで意識しているのは「エコシステム」を構築することです。
自社のみですべてを解決できるわけではありません。

実際に、アイホン、美和ロックとパートナー関係にはなりましたが、これからも少しずつ契約を増やしていくつもりです。
そして、業界の各ステークホルダーと手を組みながら、課題を解決していくことが創業当初に描いていた理想像。

その理想は、少しずつ現実のものとなってきています。

その理想の実現に向けて、必要なのは何でしょうか。

弊社のソリューションサービスを普及させるための営業力です。
現在の弊社のメンバーはITやICT出身者が多くを占めており、不動産業界の専門知識が乏しいんです。
不動産の法人営業における知識や経験を活かし、ソリューション拡大に力を貸していただきたいと考えています。

今後、メインのサービスから派生したさまざまなサービスを住宅に提供する可能性があります。

先ほどお話ししたように、まずはインターホンの最大手のアイホンと提携したことで集合住宅の共用部分に弊社のシステムでアクセスできるようになりました。
次に、錠前の最大手である美和ロックとタッグを組んだことにより、住宅の専有部分にアクセスすることも技術的には可能になります。

これから、集合住宅に向けて色んなサービスを提供するチャンスが増えることになります。その際、ITの知識のみではプロジェクトを進められず、不動産業界での知識や経験が必要になると判断しました。

IT、サービス、そして不動産といったあらゆるリソースを備える事業体にしておきながら、今後、多様なソリューションを打ち出していきたいと考えています。

貴社で働く方に期待することは何でしょうか。

新しいことに挑戦していく姿勢を期待しています。
ずっと同じことを繰り返せばいいわけではありませんよね。

弊社は宅配業界と不動産業界の課題を解決してきましたが、不動産業界にはアナログな面がまだ多く残っています。
安全性が担保されていないわけではありませんが、社会全体がデジタルへとシフトするなかで、弊社が果たすべき役割は確実にあると感じています。

今後の貴社の展望を聞かせてください。

会社としてもチャレンジする姿勢は今後も変わりません。
弊社は2027年度に黒字転換を目指しており、その数年後にはIPO(新規株式上場)ができるように取り組んでいきたいです。

福利厚生として社員の持ち株制度を整えており、会社の成長が社員一人ひとりの将来の目標にもつながる仕組みづくりを心がけています。

また、日本のみでなく、海外展開も視野に入れています。
少子高齢化が進み、高層の集合住宅が集まっている、日本だからこそ弊社のソリューションサービスは普及したのだと思います。
一方で、日本と都市の構造が似ている韓国やシンガポール、そして急速な人口減少が予測される中国などにも、展開の余地は十分にあると見込んでいます。

なお、弊社は不動産を対象としたSaaS企業です。
普通のソフトウェアのSaaSと比べて、不動産向けのSaaSは解約率が低いという特徴があります。
時間の経過とともに導入物件数や世帯数が徐々に増えていくため、一度黒字転換できれば、企業経営はこれから安定していくという見通しです。

そこがスタートアップの醍醐味でもあり、その後の展開が非常に楽しみでもあります。

お客様プロフィール

■企業名
株式会社PacPort

■所在地
東京都千代田区大手町二丁目2番1号 新大手町ビル 3F 0 Club

■事業内容
・不動産向けDXソリューションプロバイダ

■公式サイト
https://www.pacport.com/
https://pabbit.cloud/